5月に図書室に入った新刊図書をご案内します。
*忘れ物のぬくもり 聖書に学ぶ 塩谷直也 女子パウロ会
著者は日本基督教団の牧師。雑誌「あけぼの」に掲載された43の信仰エッセイ。子どもの頃の思い出や日常のちょっとした気づきから、思いもかけないルートで聖書の真髄に迫ってゆく。やさしく暖かな語り口ながら、ひとつ読むごとに心をゆすぶられて、立ち止まらざるをえない。
*杉原千畝とコルベ神父 生命をみつめる 早乙女勝元 新日本出版社
東京大空襲について語り続け、今年の5月10日に亡くなった早乙女勝元さんの本。ユダヤ人救出のために、政府の命令に背きビザを発行した外務官杉原千畝と、アウシュヴィッツで身代わりとしてみずからの命を差し出したコルベ神父。戦争という極限状態でも人間らしい心を失わなかったふたりの足跡をたどった紀行文。第二次世界大戦時の状況やナチスのホロコーストが、ウクライナで戦争が起きている今現在読むと非常にリアルに感じられる。たくさんの写真が収められている。
*ユダ 烙印された負の符号の心性史 竹下節子 中央公論新社
イエスの十二使徒のひとりでありながら師を売ったユダは〈裏切りのキャラクター〉〈悪の象徴〉〈憎悪の対象〉となった。キリスト教文化圏で、またその外で、ユダが歴史的にどのように解釈され、描かれてきたかを追う。神学から民間伝承、心理学から文学まで人間の心性がユダに投影してきたものを豊富な例を挙げて検証していく。