4月に図書室に入った新刊図書をご案内します。
*カリットへの旅 - カルメル会の歴史 - ピーター・トマス・ロアバック(カルメル会士) サンパウロ
1966年に書かれた本の再版。この本は魅力的な語り口で歴史書の新しいモデルと絶賛された。カルメル山の威容と預言者エリアから始まる物語は、パレスチナに起源を有し、西ヨーロッパで繁栄した修道会の歴史を、さまざまな聖人たちの姿とともに描き出していく。十字架の聖ヨハネやアビラの聖テレジアの話はもちろんのこと、現在にいたるまで存続し、世界中に広まった修道会独自な霊的伝統とその歴史が、長編小説のようなおもしろさで読める。
*コヘレトの言葉を読もう 「生きよ」と呼びかける書 小友 聡 日本キリスト教団出版部
NHKの「こころの時代」で取り上げられ、若松英輔さんとの対談が書籍化もされた「コヘレトの言葉」。著者は神学大学生の時に、わからない旧約聖書のなかでも最もわからなかった「コヘレトの言葉」をテーマに選び、生涯にわたって研究してきた。そして「すべては空しい」と繰り返す書が、「つかの間の人生を精いっぱい生きよ」と人生を肯定し、神の賜物であるこの瞬間を楽しむことを呼びかけているという新たな読み取りを提示する。
*ナチスに声を上げた男 ミュンスター司教フォン・ガーレン マルクス・トラウトマン 教友社
ナチスが統治する第3帝国で、命がけで「障害者安楽死政策」(それはホロコーストのリハーサルでもあった)を批判したフォン・ガーレン司教の説教は大きな反響を呼んだ。それは手書きや謄写版印刷で複製され、さらに連合国は説教に基づいた宣伝ビラをばら撒き、世論の動揺を見たヒトラーはついに計画の中止を決めた。司教は政治的な観点からではなく、キリスト教的従順にもとづく信仰心から、時の権力者と「生命をおびやかす力」に対して、神と人間の権利と尊厳を擁護したのだった。付録として収録されている「殺してはならない」「生きるに値しない命などあるのか」と説く1941年の伝説の説教だけでも読んでみて下さい。
*難民に希望の光を 真の国際人 緒方貞子の生き方 中村 恵 平凡社
ロシアのウクライナ侵攻で、今現在多くの避難民が生まれている。難民とは何なのか、国連難民高等弁務官事務所 UNHCR とは何をするところなのか。日本初・女性初の国連難民高等弁務官として世界の難民のために尽力した緒方貞子。その生涯と仕事と人となりを、パーソナル・アシスタントをつとめた著者が語る。