労働者聖ヨセフの祝い 2021年5月1日

第1朗読 コロサイ3章14~15、17、23~24

福音朗読 マタイによる福音書 13章54~58

 

お話の要約

このように現在、コロナ禍が続いて、だいたいの皆さんはそちらに関心がいくのではないかと思うのですが、そのような中で教皇さまがヨセフ年を宣言したのは凄く新しいことです。教会が始まって以来初めて制定した年で、聖ヨセフが私たちの信仰の中でどのような関わりをもつか考える機会にもなると思います。

 

ご存知のように、聖ヨセフはそんなに目立っていなかった。聖書には「正しい人」と言われていますが、聖ヨセフが関わったことはひとつも聖書に載っていません。福音書の中でわりに早くから聖ヨセフの名前は見られず、たぶん、キリストが福音宣教をする前に亡くなったのではないかと一般には言われています。そういう意味では、隠れたというか静かというか、でもその役割は本当に大きなものです。それだけ隠れた役割ということもあったかも知れませんが、教会の中でも信心はわりに後の時代、だいたい15世紀頃から芽生えて発展します。聖母マリアは古代教会の時代からすでに祝われたのですが。そこからひとつ大事なことがわかります。私たちの中で、信仰生活であまり目立っている人は少ないでしょう。それならば、聖ヨセフこそ私たちの信仰の模範になるのではないかと思います。

 

聖ヨセフは「正しい人」、「神に従う人」として聖書の中に見られます。聖母マリアを迎えるように言われたら聖母マリアを迎え、避難するように言われたら避難しました。神さまのみ心を目立たない日常的な形で行いました。避難するような特別なこともありましたが、大部分は静かな、当時の普通の家庭生活を送っていました。福音書にあるように大工として働いて、聖母マリアもキリストも養ってくださった。地道に、日常的な勤めを忠実に果たしたのです。それこそ大きな、偉大な聖人になるのです。と言うのは、ほかの聖人も示しているように、特に小さき花の聖テレジアが強調するように、要は偉大なことをするかどうかは問題ではなく、神さまの前で価値あるものは、愛を込めてすることです。ささいなことでも、愛を込めてすると、それは神さまの前で偉大なものです。それがいつも大事なこととなるのです。聖パウロが勧めていることです。「これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです」(コロサイ3:14) 私たちの行いの価値は、神さまの前で、愛の度合いによってわかります。聖ヨセフはその愛をもってもっと愛するようになったと思うのです。

 

考えてみれば、教会の歴史には、聖人のまわりにほかの聖人が出る傾向があります。聖人の影響によってほかの人がキリストに近づいて、その人たちも聖人になるのです。それならば、もともと正しい人であれば、聖ヨセフは聖母マリアとキリストご自身と長い間、身近で一緒に暮らしている中で、どれほど聖人になったか考えられると思います。もともと善い人であったけれども、そのふたりを心から愛して一緒に住んでいると、そういう愛の生活の中で、聖ヨセフも凄く深く愛する人になって、ますます聖人になったのです。それは私たちに対するメッセージにもなると思うのですが、私たちはそういう環境に恵まれていないとしても、やはりそこで聖ヨセフの助けをもらえるようになるのです。聖書が言うには、正しい人の祈りには力があります。効果をもたらします。それなら、神さまご自身に聖家族を養うために選ばれた、正しい人ヨセフは、どれほど力強く祈っておられるか。あらゆることで私たちも、聖ヨセフの取り次ぎを願うことができます。

 

教会はそんなに太古からではないにしてもその違いに気づいて、教皇フランシスコが記念して聖ヨセフの年を宣言したきっかけも、教皇ピオ9世が、聖ヨセフを普遍教会の保護者として宣言したことに由来します。約150年前のことです。と言うのは、神さまご自身が聖家族を守って養うために選ばれた聖ヨセフが、今度は神さまの家族である教会を守って助けてくださるように、そういう祈りを込めて教会は聖ヨセフを仰いでいます。特に、最初にも言ったようにこのコロナ禍の中で、皆さんはカトリック新聞を見て気づいたと思いますが、教皇さまは特に5月をコロナ禍の終息のために祈るように、この一か月特別にロザリオの祈りを勧めています。マリアさまの月であると同時に、せっかくヨセフの年でもあるのですから、今日の祝いを特に聖ヨセフにも同じように取り成しを願いたいと思います。

 

聖ヨセフの力強い祈りの一つの側面は、どれほどキリストに近かったかによって、その聖人の影響というか祈りの力が強くなるか。その意味では、誰よりもキリストの身辺に結ばれた聖母マリアの祈りは力強いですが、聖母マリアに次いで、聖ヨセフもキリストの身辺に深く結ばれていました。だから、守護の聖人として、国とか普遍教会の保護者として宣言されています。その役割、その恵みをいただいている聖ヨセフに取り次ぎを願いたいと思います。このコロナ禍の終息や、あらゆるこの世の中の平和、このごろの気になるミャンマーの状況もありますが、あちらこちらで大変なことがあり、コロナ禍のインドで今苦しんでいる人々、そういうことを合わせて、聖ヨセフの取り次ぎを願いたいと思います。

 

それで、今日のごミサでこのご像を紹介して、後で完成してから設置して、祈りの場所にできればと思っています。そこで祈って、聖ヨセフの取り次ぎを願う場所になったらいいと思います。

 

では、一緒に。聖ヨセフの取り成し、力強い祈りに信頼して、主に願いたいと思います。まずひとつは、普遍教会の守護聖人である聖ヨセフに取り成しを願います。この教会には今、あちらこちらで迫害や苦しんでいること、場所がたくさんあります。主の恵みが与えられて、苦しみの中で人がキリストに結ばれて、キリストの愛を復活することができますように。そして、あらゆる教会が神さまの恵みを守ることができますように。主よ、私たちの祈りを聞き入れてください。

 

聖ヨセフは聖家族のために、聖母マリアとキリストを守って養うために選ばれました。すべての家族のために、聖ヨセフの取り成しによって、すべての家族が祝福されて、特に今、苦しんでいる家族、家族の中のトラブルや平和が足りない家族が、主の恵みによってもっと深く愛し合うこと、和解することができますように。主よ、私たちの祈りを聞き入れてください。

 

世界の平和のために祈ります。戦争や内乱、暴動、ミャンマーのような圧政が絶えない社会の中で、主の恵みによって人が回心して、悪事を働いている人が回心して主に立ち返り、平和が戻りますように。主よ、私たちの祈りを聞き入れてください。

 

教皇さまの意向に沿って、聖母マリアに聖ヨセフに祈ります。このコロナ禍が一日も早く終息するように、病気から守られて安心な生活ができますように。主よ、私たちの祈りを聞き入れてください。

 

この大船教会のために祈ります。私たちは、聖ヨセフの年をこうして祝って、これからこの聖ヨセフのご像を設置することにしています。だからいつも、私たちの守護聖人の聖アンナの婿さんでもある聖ヨセフに私たちも助けられ、主の恵みによってますます、ともに祈りともに歩む共同体になりますように。主よ、私たちの祈りを聞き入れてください。

 

私たちの主イエス・キリストによって。アーメン。